入れ歯について詳しく知りたい方へ

保険診療と自費診療の違いなど

医科だけでなく、歯科の分野でも保険診療と自由診療では使用できる材料や技術(治療法)、時間などに違いがあります。保険診療はすべてにおいて最低限の治療という制約がある反面、費用を安く抑えることができます。一方、自由診療はあらゆる項目において自由度が高く、上質の素材が選択できる上に、治療の過程で有効な技術を反映させることができます。その代わりに、費用は高額になってしまいます。

  保険 自由診療
材料(歯肉部分) 選択不可(レジンプラスチック)) 選択可能な材料が多い
思い通りに選べる
自分の好みや用途によって使い分けができる
材料(人工歯部分) 選択不可(プラスチック) プラスチック以外にも、セラミックや金属などを選択できる
製作工程 型取り1回のみ 細かな型取り
精密さを上げるために専用の器具を使用
口腔内の筋肉までも再現
審美性 既製のもの 自然な色合いに合わせる事ができる
調整 後々の調整が出る場合が多い 不具合がほとんどないため、調整が少ない。

わが国の保険診療の範囲内では、歯科医療でも、欧米で一般的に使われているレベルの金属製義歯はつくることができず、もちろん審美性およびメンテナンスの点でも、保険診療では「それなり」のレベルでしか提供はできません。 それでも当院では、初めて入れ歯を入れるほとんどの患者さまに保険診療内の入れ歯をおすすめしています。まずはベーシック(基準的)なものを使ってみて、その上で不具合があるとか使い勝手が悪いといったときに、次の手段として自由診療へ移行するという対策があるからです。

入れ歯の種類

保険の入れ歯

使用できる素材が限られていたり、一度つくってから6か月間は作り直しができなかったり、といった制限はありますが、実際のところ、当院では保険診療の範囲内でも機能性や審美性の点で遜色のないものをお作りし、使用していただけます。 代表的なものは以下のとおりです。

総入れ歯

総入れ歯

すべての歯を失った際の入れ歯。レジンというプラスチックの床(しょう/土台)に人工歯を並べたものです。はじめのうちは大きな違和感があるものの、慣れてしまえば「噛む道具」としての機能は備えています。

部分入れ歯

部分入れ歯

残っている歯にバネ(クラスプ)をひっかけて支え、装着する入れ歯。床はレジンというプラスチック製。噛み合わせの不具合など、調整を必要とすることがあります。

自由診療の入れ歯

主に素材や製造法において、保険のものよりも自由度が高く、グレードアップが見込めます。その結果、見た目や耐久性、厚みの点など、使い勝手のいい入れ歯を製作することができます。ただし、費用は高くなります。 代表的なものは以下のとおり。

金属床義歯

金属床義歯

歯茎や歯の部分を支える床を金属にすることで、薄く、違和感を軽減した入れ歯となります。その薄さにより料理の熱を感じることができるので、食事が楽しくなります。ただし、金属製だと修理が難しく、費用が高額になってきます。また、金属アレルギーの方には適用できません。

バネのない入れ歯

バネのない入れ歯

「ノンクラスプデンチャー」とも呼ばれる、金属のバネ(クラスプ)のない入れ歯です。素材は弾力性のある樹脂で、その素材の柔らかさがバネの役割を果たし、審美性にも優れています。 ただし、破折するリスクがあり、そうなった場合すぐには修理できないのが難点です。

部分入れ歯

部分入れ歯

1本~数本の歯を失った際の代替歯として作る着脱式の義歯。残っている歯や、歯茎を支えに装着します。さまざまな素材があります。

最初は「保険治療の入れ歯」を

最初は「保険治療の入れ歯」を

失った歯の代わりを担う代替歯については、当院では選択肢の第一候補として、まず「保険診療内の入れ歯」をおすすめしています。というのも、初めて入れ歯をつくる患者様の場合、入れ歯を使用していくイメージがなく、口に入れたときにどんな感触なのか、また噛み心地や違和感などの使用感が実感としてわからない状態だからです。 このような状況では、いきなり自由診療で高額なものを作っても、入れ歯についての可否を判断できないだけでなく、それが適正なものだと受け止めてしまいかねません。ですから、まず保険診療の範囲内で現状のお口に合うものを作り、使用してみるところから始めていただきたいのです。そこで不具合や不満があれば、入れ歯をバージョンアップしたり、ほかの選択肢を選んだりして改善していきます。 当院としては、入れ歯の良し悪しがまだわからない「入れ歯初心者」の患者様が、最初から自由診療の入れ歯を使用することには疑問があります。ベーシックな保険診療の入れ歯を作って使用しているうちに、金属のバネの見栄えが気になるとか、異物感がなかなか払拭できないなど、満足できない点が浮かび上がってくるかもしれません。まずは、そのような患者様の感想を引き出します。そして、満足できない点はどうしたら解決できるのかを考え、それが自由治療でクリアできるのであれば、そのときに初めて自由診療にステップアップしていくのが順当と考えます。

保険診療内の入れ歯製作の流れ

保険診療内の入れ歯製作の流れ

入れ歯の製作が決まったら、型取りなどを行った上で、その情報を基に噛み合わせなどを含むいわゆる入れ歯の設計図に相当するものを院長が描きます。そして、実際の製作は歯科技工士が担当します。出来上がった段階で院長がチェックして、患者様に装着いただきます。入れ歯を作ると決めてから実際に使用が始まるまでの期間としては、初診から週1回の通院として、最短で4~5週間といったところです。

一度作って終わりではなく、メンテナンスが必要

実は、入れ歯は1回作って終わりというではありません。作りたての時点ではぴったりはまって快適であっても、時間が経過するにつれて口腔内の粘膜の形が変化し、固定された入れ歯は粘膜のすき間などに当たって痛みが生じてくることがあります。 そこで当院では、保険診療の入れ歯はそのまま保険の範囲内でメンテナンスし使い続けていただきます。保険診療の入れ歯であっても、快適に使用できるようになればもちろんOKですが、一方で不具合を改善することができなければ、「自由診療の素材や技術による入れ歯を試す」という選択肢をご提案し、患者様に選んでいただきます。 入れ歯の使用は毎食、毎日のことなので、できればメンテナンスするごとにきちんと調整したり、必要な場合には作り直すこともアドバイスさせていただきます。実際、どれくらいのインターバルで、どんなメンテナンスを行うかは患者様の考え方次第で、院長との相談となります。

保険内の入れ歯は保管しておいて

保険内の入れ歯は保管しておいて

当院では、保険診療内で「最初の入れ歯」を作ることを推奨していますが、次の入れ歯、とくに自由診療のものを新調するときには、その最初の保険の入れ歯を破棄せずに保管しておくことをアドバイスしています。 それは、たとえば2番目の入れ歯を調整したり修理したりするとき、数時間でできるとは限らないからです。しかも、次の入れ歯を丸ごと新調する際には、数日以上の日程がかかります。そこで、最初の入れ歯をスペアとして保管しておけば、時間がかかる修理の際でも使うことができて安心です。

過去に作った入れ歯のメンテナンスも歓迎

過去に作った入れ歯のメンテナンスも歓迎

当院で入れ歯として扱っているケースの多くは、実のところ過去に作られた入れ歯の問題解決です。合わないけれど、なかなか調整や修理の希望を言い出せないとか、「入れ歯なんてこんなもの……」と妥協して使用している、あるいは何が悪いのかもはっきりせずにそのまま使っているなど、状況は様々です。本来なら診療対象になるべき事案が多いことには、当初院長も驚きました。

そこで、院長はそうした患者様の入れ歯の面倒をみることで、多くの入れ歯ユーザーの皆様のお口の健康の回復に尽力してまいりました。そうした入れ歯を含め、院長がちょっと手を加えた調整後には、「こんなに変わるんだ!」と感激する患者様も多くいらっしゃいます。

入れ歯は調整しながら使っていくものなので、院長が現在使用中の入れ歯の不満点などを伺い、さらにその入れ歯を見て問題点を把握し、それを解決するために手直しいたします。そのような流れで、すでに使用している入れ歯の満足度が上がったケースは多くあります。ぜひ一度、当院にご相談ください。

通院できなくなる前に入れ歯を製作

保険診療も自由診療も関係なく、入れ歯をおすすめする理由がもう一つあります。高齢者になって、何らかの理由で、自分で歯科医院に通院できなくなったとき、あるいは通院が億劫になったとき、入れ歯に関しては外してご家族の方が持参することでメンテナンスを受けることが可能だからです。 調整した入れ歯を、院長がご自宅までお届けしたようなケースもありました。つまり、患者様が移動できなくなっても、入れ歯の現物さえ当院院長の手中にあれば、調整が可能ということです。その結果、患者様はちゃんと食事をすることができます。そのときのためにも、元気なうちに歯が抜けたら、まずは入れ歯を作っておくとよいでしょう。

入れ歯に至る歯の問題の解消

保険内の入れ歯は保管しておいて

虫歯や歯周病は、お口の中の細菌が原因とされていますが、実は、そのほかの要因として、「歯ぎしり」や「食いしばり」が関わっていることが明らかになっています。就寝時や仕事で集中しているときなど、歯(特に奥歯)に大きな圧力がかかることで歯茎に炎症が起こり、歯周病が悪化したり、歯が破折したりします。そうした噛み癖のある患者様には、入れ歯を使用する上で、その癖が影響を及ぼすリスクを説明し、適切な噛み方の指導なども行います。 そもそも、なぜ歯を失うようなことになってしまったのでしょうか。歯や口の中のお手入れが徹底できないことが原因で細菌感染し、虫歯や歯周病になってしまったのでしょうか。あるいは食いしばりが激しいという癖があったから歯周病が進行し、抜歯に至ったのでしょうか。 患者様自身ではほとんど理解できない問題も、当院では院長が口腔内をチェックすればすぐに判明します。お口の中の問題として、どんなことがあるのか一緒に解明していきましょう。そして、今後の課題として、お手入れや噛み方の訓練も行うことをおすすめします。

よくあるご質問

Q

入れ歯を作るのに、どれぐらい日数がかかりますか?

A

入れ歯の製作には、一般的に大きさや材質によって異なりますが、通常2週間から1か月ほどの時間がかかります。

Q

入れ歯を作ってから何回くらい調整が必要ですか?

A

ほとんどの患者様は、初めは入れ歯に少し異物感を感じることがありますが、特に発音の面で難しさを感じる方が多いようです。これは舌が入れ歯に慣れておらず、うまく動かせないことが原因です。通常、2週間程度の時間をかけて使い込むことで、発音に慣れていきます。積極的に話す練習をし、口の中を動かすことで、徐々に発音が改善されるでしょう。食事に関しては、最初は柔らかい食べ物から始め、徐々に硬い食べ物に慣れていくことがおすすめです。急激に硬いものを噛むと、歯茎に過度な負担がかかり、傷ができる可能性があるため、注意が必要です。入れ歯に慣れることが最も大切なので、無理をせずに食事を楽しんでください。

Q

入れ歯のメンテナンスはどれくらいの間隔が必要ですか?

A

入れ歯の大きさや配置にもよりますが、歯のケアと組み合わせて、通常は半年に1度の診察が推奨されます。ただし、歯周病の進行が進んでいる場合は、3か月に1度のメンテナンスが推奨されることもあります。

Q

入れ歯の上手なお手入れ方法は?

A

通常の入れ歯のお手入れは、専用の入れ歯用ブラシを使用して、何もつけずに入れ歯を細かく洗浄することで充分です。食事やタバコなどによる着色汚れを除去し、殺菌消毒を行うために入れ歯洗浄剤を使用することも効果的ですが、頑固な汚れには効果が限定されることがあります。このような場合、眼鏡店などで入手可能な超音波洗浄器を使用することで、細菌、タンパク質、色素などの頑固な汚れも効果的に除去できます。超音波洗浄器は通常のお手入れに比べてより便利な方法と言えます。